社会福祉法人照治福祉会

中期経営計画

(始:H27年度〜至:H31年度)

平成27年2月策定

<基本方針>

社会福祉事業・社会福祉法人を取り巻く環境は、現在、非常に厳しいものになっている。
我が国の福祉は、国家の荒廃の中に生まれ、その成長とともに育ってきたはずが、成熟期を迎えることなく衰退・滅亡の危機に瀕すると言って過言でない状況に追い込まれつつある。社会構造・経済情勢など時代を構成する様々な要因と、その時代その時代の中で、現実にそこに生きる人々の価値観の変遷と共に、数々の転機を経て今日に至るまでに、一体何が足りなかったのか、どこで間違えたのか、を社会の声を真摯に受け止め一つ一つ何を問われ、何を求められているのかを正確に理解し応えていくことで、この逆風を跳ね返しその力をも自らに取り込み、更なる高みへと進んでいきたい。

1990年台の我が国の社会経済構造の激変に伴う、あらゆる価値の再構築が引き金となって、2000年の社会福祉基礎構造改革とそれに相前後して巻き起こった議論や、それ以降の法・制度改正、そしてここ数年来、国(政府)、政治政党、行財政、経済界、そして世論をも巻き込んだ様々な会議・審議会・委員会等は、実に多岐に渡る。私たちの事業環境を大きく左右するものとして思いつくままに挙げるだけでも、規制改革会議、社会保障制度改革国民会議、経済財政諮問会議、政府税調、日本再興戦略会議、社会福祉法人の在り方等に関する検討会、社会保障審議会福祉部会・・・、など枚挙に暇が無いほどである。しかし、場所やメンバーが違っても、それぞれの議論の根幹にあるものは、現在もそしてこれからもその担うべき事業の「重要性」や「発展性」が益々増大するであろう社会福祉法人・社会福祉制度への「期待」ではないだろうか。その期待に「責任をもって」応えることこそ、この難局を乗り越える最善の道と考える。そこで、この「責任」を考えるときに、以下「3つのD」と「3つのS」の相関関係を軸に、今後の法人経営と事業運営を展望してみたい。

まず最初の“D―S”は、「Demand」:「需要」と「Serve」:「責任をもって役に立つ」という着想である。目の前の利用者はもちろん、その周辺にいる顕在的利用者、そして地域・社会にある潜在的利用者の需要・ニーズを探り、それに迅速かつ的確に対応する福祉サービスを持って応えていくとする考え方である。ここで需要なことは、経済学でいうところの「Demand」に対応する単なる“Supply”ではなく、実施提供するサービスとその質にこそフォーカスした行動規範、すなわち、聖書の言葉を借りれば「自分がされたいように相手にも行え」を基本とする、いわば本来的業務の遂行姿勢までをも規定する概念としての「Serve」に思いを致すという点である。

そして次なる関係性は、「Diversity」:「多様性」と「Satisfaction」:「満足」というものである。利用者の多様性の受容・理解と、それぞれに対する最も効果的な対応を志向することは当然ながら、内なる職員や、利用者のむこうにある社会の目についても、この視点を大切にしなければならない。この場合の“S”は特に重要なので、さらに細分化して考えたい。すなわち“3つの満足の創造”=CS(利用者満足)・ES(職員満足)・SS(社会的満足)=という視点から、我々の事業構成要素の複合的変化への対応を的確に行い、比較文化学者による「日本は同質を重んじる文化」という枠にとらわれない多様性への許容度の拡張に努め、ES実現による生産性の向上を通して、CS・SSをより高めていく必要があるということである。

そして最後のキーワードは「Disclosure」:「開示」と「Specialty」:「専門性」である。透明性の確保は、社会福祉法人の公益性とその制度上の担保に照らし言うまでもないことであるがこの件に関する現在の異常なまでの世論の高まりと社会的要請の根底にあるのは、我々の事業そのものに対する不足感・不満感・不信感・不透明感であろう。そしてこれらを生む最大かつ根源的な印象は、情報不足による“無知”であるように思えてならない。我が国の福祉の発生状況からも容易に類推できるように、これまで社会福祉そのものが本質的には、当事者だけの、個別で特殊な、秘匿性の高い性格を有する活動で、自他ともに、あまり大々的に喧伝するような“事業”として捉えきれずに来た経緯があるようにも見える。要は、我々の事業そのもの(制度・運営状況・実施内容)に対する認知・理解が薄く、第三者的に“よくわからない・見えない”ために、それぞれの立ち位置から見た場合、そこに疑心暗鬼が生まれたり、隣の芝が青く見えたりといった負の見地が確立しつつあるように思えてならない。しかし、これは当事者である我々の責任も大きいと言わざるを得ない。創設・起業時の理念や先人の多大なる功績による制度の拡充という座布団に胡坐をかき、自らを律する機能の整備と合わせた社会への主体的働きかけや、高い専門性に裏付けられた客観的データの蓄積と分析による情報開示や発信を可能とする可視化への取り組み等を怠ってきた結果とも言えるからだ。そこで、業界団体をあげてこれまでのツケを一掃するだけの、専門性に裏打ちされた明確な根拠を基に練り上げた、隙のない理論武装と公正な挙証資料の提示を進めるべく、それぞれの法人にあっては、第一線で活動する事業者として、事業そのものについての専門性を高め、事業のデータ化と蓄積データの体系化を急ぐことこそが喫緊の課題と言えよう。

以上3つのD-S相関関係を軸にまとめることで見えてきた、我々の進むべき方向性に基づき、具体的な行動計画の骨格を示すと、

  1. 運営する施設における保育サービスの更なる質の向上のために
    ・社会的認知と利用者満足(決して迎合ではない、すべての子どもの育ちにおける最善の利益の追求と想像・提供を通して得られる結果としての満足)の達成に向け、さらなる質の向上に向けた取り組みを、職員満足の視点から希求するためのパラダイムシフトを行うこと。
  2. 制度にない、制度が薄い福祉需要に、社会福祉法人として主体的に取り組むために
    ・必要とされる新たな福祉サービスの創造と提供のための情報収集や、パイロット事業の実施に果敢に挑むと共に、先駆的な取り組みの効果的な試行のため必要となる一定の規模・スピードの確保のため、多様な事業主体・連携機関との協働事業展開を容易にすべく、相互理解を深める活動を地域において主導すること。
  3. 100年続く法人経営・事業運営のために
    ・公益性が高く社会的期待も高い事業の性質に照らし、広く有為の人材の登用を経営層にまで求め、全職員がより高い専門性を養うことで経営・運営の質を高めると共に、自ら積極的に、経営の透明性の確保に向けた情報開示、事業実施により蓄積された無形資産の社会還元としての情報提供・発信などを行い、真に地域社会に必要とされ信認を受け、支持される法人としての価値を創造すること。

以上、3つの骨格に肉づけを行い実行に移していくために、各拠点区分ごとに、単年度の事業計画を策定し、実現に向けた予算を立て、適切な執行に努めていく所存である。